2024年3月 情報誌「poroco」

札幌の街をアクティブに楽しむための生活情報誌「poroco(ポロコ)」4月号
捨てられる素材を活かし、想いをつなぐ老舗染物屋による”北海道染め” 

豊平川の程近く、良質な地下水に恵まれた菊水で、1948年に創業した野口染舗。初代が京都「野口染工」から来道し、現在は5代目である野口繁太郎さんが家業を受け継いでいる。
 染め替えや洗い張り、仕立て直しなどをしながら、親から子へ、世代を経て長く愛用する着物の文化。野口さんはそんな「ものを大切にする心」を根底に、染物屋として培ってきた技術を活かして洋服も染め替え、’20年には、廃棄されてしまう素材を使って染める「Re COLOR PROJECT」をスタート。染色の可能性を模索する中、’23年には、北海道の天然素材を使ったブランド「BetulaN」を生み出した。
 きっかけは、知り合いのバリスタとの会話。コーヒーの出がらしで染めることから始め、森を健康に保つために必要な間伐の際に出る白樺の枝葉や樹皮、アロニアをジュースに加工するときの搾りかすなど、本来なら捨てられるはずの北海道の天然素材を活かし、ここにしかない“北海道染め”を創り上げた。化学染料では出せないニュアンスのある色合いと、使い込むことで経年変化を楽しめるのも魅力の一つ。
 素材は、コスメブランドやワイナリーなど、道内各地のパートナーから受け取っている。「例えば、丹精込めて作物を育てる生産者の方など、携わってくれた方の想いも込めて染めています。モノとしての価値だけではなく、背景のストーリーも魅力になることが、着物の文化に通じると感じています」。
 ワイナリーでの染め物体験や、コーヒーイベントへの出店、コラボアイテムなど、パートナーとの関係の中で実現した取り組みも多く、「捨てる」を変換し、新たな価値をつなげている。

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