2013年5月17日「北海道新聞朝刊」

野口染舗(菊水8の2)には着物の本場京都でも手に負えない染みや汚れが全国から持ち込まれる。多い月は3千枚だ。
野口染舗は終戦後の1948年、創業者が地下水の豊かさにひかれて京都から移ってきた。
染み抜きや染め直しを得意にしている。
 創業者の次男で4代目の野口聡さん(55)は1990年代、一つの決断をした。
 着物の世界はブランドや呉服店ごとにある程度の系列があり、染めや仕立てなど仕事を分業しているという。
着物が飛ぶように売れる時代ではない。系列の仕事だけを続けていくことに危機感を抱き、「より消費者に近く」と、そこから飛び出したのだ。もちろん腕に自信があるからだ。
 一般客が直接、商品を持ち込めるようにすると、口コミで評判が広がった。
芸能人や政界の顧客も増えた。「京都で断られたと、うちを頼ってくれる方も増えてね。本物志向の人にも認められている証し」と誇らしげだ。
 5代目になる長男の繁太郎さん(30)は、ジーンズを使った着物や作務衣の販売に取り組む。
ジーンズ着物は「札幌コレクション」に出品したほか、札幌で活動するパフォーマンス集団「一世一代時代組」の公式衣装にもなった。「着物が決してお年寄りだけのものではないことを広めたい」。野口家には脈々とフロンティア精神が受け継がれている。

新聞
野口染舗|創業一九四八年[美しさ、いつまでも]札幌市菊水の染舗です。
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